南の海で生まれて日本の海を北上するマグロ
マグロと一口に言っても「ビンチョウ」「キハダ」「カジキ」「クロマグロ」と種類も多く、
私たちが言う「マグロ」とは「クロマグロ(本マグロ)」です。
台湾・沖縄海域を主な繁殖地とし、一部は九州の海域でも繁殖し、太平洋、日本海を回遊しながら成長します。主なエサはイカ、イワシ、サバ、サンマ、カツオなど。
1歳で50〜60センチ、重さ4kg、
3歳で100~120センチ、重さ26kg、
10歳でおよそ2メートル、重さ140kgほどにになります。
繁殖年齢は4歳ごろから。
マグロの寿命は20年ほどとされています。
マグロの餌のいない海になった
壱岐の鰤・鮪は対馬と壱岐の間の「七里が曽根」が絶好の漁場になっています。
日本海ト東シナ海を分けるいわば分水嶺で水深の平均は100M前後、もっとも浅い地点で45メートルの水深になります。
二つの大きな海がここで湧きあがりプランクトンが豊富。
プランクトンが多いので小魚が豊富、小魚が多いのでイカ、イワシ、アジを捕食する回遊魚が釣れるポイントでもあります。この漁場に最も近い勝本町漁協では、魚資源保護のため網による漁獲を禁止、ブリ、鮪を一本釣りで釣り上げています。現在、勝本の水揚げの5割はイカ、4割はマグロ、他種が1割を占めています。
しかし、豊かであったはずの海で、今、本マグロが釣れなくなってきている。
本マグロの餌となるイカ、イワシ、サバが獲れません。
この海域で腐るほど釣れていたイカがいなくなりました。
原因として挙げられるのは、
一つは海水の温暖化による漁場の北上移動があります。
もう一つは大漁漁獲漁法でこの海域のイカ、イワシなどマグロの餌となる魚が減ったことで本マグロが漁場にとどまらなくなったことです。
幼魚やヨコワも構わず獲り続けると・・
温暖化で漁場が北に移ったことに加えて、これまでイカ・イワシ・サバなどを獲っていた大型巻き網船がそれらの魚からマグロ漁獲に乗り出してきました。対馬海峡なら浅い。この時期必ずここを通るということがわかりますので壱岐海域から山陰沖でマグロを狙う。
網ですから成長した大人のマグロだけをターゲットにはできません。50キロ以上だけ・・というわけにはいかない。1・2年の稚魚、3~5キロのヨコワもかまわず
網ですくい取って水揚げされます。
マグロの漁獲量データはありますが、データに成魚と幼魚の明確な区別はありません
大まかなデータだけからしても幼魚からヨコワが少なく見積もっても全体の50%以上ではないかと推測されます。
水産学専門家による魚齢別マグロ漁獲の一つのデータです。
これによると驚くことに漁獲本数の90%が幼魚・ヨコワ になっています。
(三重大学 勝川博士のホームページに掲載)
http://katukawa.com/?p=3481
これではマグロがいなくなる。
日本海で行われている日本の巻き網を使ってのマグロ漁に加えてもう一つ危惧されるのが東シナ海での中国漁船による乱獲である。日本国内なら正しいルールで正しく規制が適用されもするがなんせあの国がお相手だから難しい。東シナ海中部は、クロマグロの産卵場であり成魚も幼魚もかまわず日本の漁船よりさらに大きな船のトラ網船団がごっそり獲り続ければマグロに限らず魚がいなくなる。
中国漁船が東シナ海中部で大規模に漁をはじめたのは2010年以降で、マグロの不漁が始まった時期と重なる。東シナ海中部は、日中漁業協定において暫定水域であるため日中がそれぞれ自国のルールで管理することになっており、中国漁船に日本の規制が適用されない。中国側の管理体制とはぎりぎりの海域で日本の漁船を脅かしてでも魚を獲れるだけ獲る、ということのようだ。