東京に10年おりましたから、関東地方にお住いの方の認識もある程度わかるんです、「寒ブリ＝氷見」。もう少し広範囲で石川・富山と言う思いの方が多いようです。
たしかに、富山・石川の寒ぶりは脂が多い。でも魚のうまさって脂なんでしょうか？

マグロが一番わかりやすい例ですが、近海マグロの横綱は「東の大間・西の壱岐」
実は日本海マグロ・ヨコワの水揚げは大間・壱岐より鳥取の境港がダントツに多いのです。
圧倒的に数量では境港です。でも境港を名産地とは言わない。

太平洋側の枕崎、勝浦、焼津は屈指の太平洋マグロの水揚げ港ですが名産地とはいわれません。
日本各地のマグロ水揚げ港でも格段に水揚げ量の少ない大間・壱岐は名産地と言われます。

大型はえ縄漁と一本釣りの違い、冷凍マグロと生マグロの違いです。
鮮度、肉質が大間・壱岐産マグロが最高と評価されているのです。
鮮度、肉質の違いは何故？
肉質の違いの 一つは魚がえさに食いついてから釣り上げるまでの時間
壱岐の漁師たちがよく口にする言葉に「身が焼ける」 というのがありますが、ほんとに焼けるんです。
はえ縄にかかったマグロは必死にもがいて全力で罠から逃れようとしてついに力尽きます。
5時間も10時間も暴れます。このときマグロの体温は80℃近くまで上がるそうです。

そして力尽きると、マグロの体内は老廃物だらけ。マグロの肉も高熱で変質。
汚れた血が全身に廻っています。だから市場も高くは買わない。
一本釣りでいきじめ、血抜きされた大間・壱岐のマグロが高値で買われます。

マグロの鮮度を保つ技術に優れているのが壱岐と大間なんです。 この鮮度保持技術は一本釣りがあたりまえの壱岐では代々漁師に伝えられてきた技術なんです。

富山のブリは一本釣りではなく大敷網・定置網です。
一度に何百本水揚げされますが、網を挙げるときのブリもまた必死に逃げまどい、ブリどおしでぶつかり網で擦れて、うろこがはがれて、押しつぶされて揚がってきます。

死んだ魚の血はすぐに腐り始めますから、活き締め血抜きは絶対に必要なんです。一本釣り漁師だけでなく、釣りをやる人、和食料理人さんでは当たり前の技術です。 大式網、定置網、巻き網などで水揚げされるブリにはこの処理がなされません。ですから現地で、網から揚げた翌日ぐらいまでにお召し上がりになるならおいしい・・・かも。

北の冷たい海水に耐えるため、またおいしいスルメイカなどをたっぷり食べて太っていて富山海域の寒ぶりの脂ののりは最高でしょう。確かに壱岐の寒ぶりの脂とは違います。
脂ののり具合で寒ブリを選びたいなら富山の寒ぶり。
鮮度保持処理してちょうどだべごろに届く寒ブリを選びたいなら、壱岐一本釣りの寒ぶり。